無音の楽団リブースト! 3

 三月十一日

 喫茶店で先行きを考えているカクヤに相席の依頼が店から来た。
 カクヤは快く了承する。まだ長居はしていないが、どこにも行くあてがないので無料の情報誌と新聞と地図には目を通しておきたかったのだ。
 新聞で最近の情報を集めているカクヤの目の前に男が座る。
 茶色い帽子を被った浅葱色の髪の男を見たカクヤは、一度、二度と見てあんぐりと口を開けた。指をさす。
「おま、おまえはレクィエ! 無音の楽団にいた盗賊のレクィエだろ!?」
「ああそうだよ。カクヤ。俺たちの感動の再会を喜ぶ前にまずはその指さすのを止めてもらえないか?」
 レクィエの言い分はもっともなものだ。カクヤは恥ずかしくなって指を下ろした。そのまま頬をかいていた。
 くすくすと笑ったあとにレクィエは店員に無糖の熱いコーヒーを頼む。カクヤの目の前にはメロンソーダがあったので「いい身分だ」とレクィエは笑った。
 そして目が合うと互いに、あることに気付いたようだ。
「俺たち、はぐれた時よりレベル下がっていないか?」
「ようやく気付いたのか。自分のステータスを確認したらすぐに分かることだろ。だが謎なのは、俺は『盗賊の目』と『盗賊の手』のスキル適性が離散する前より上がっているうえにレベルもお前より一つだけ高くなっている。熟練の称号もついたままだ。カクヤ。これは何かあるぞ」
 レベルが最低であるカクヤは考える。だがいまの時点のカクヤは、現状の課題を二つしか分かっていないようだ。
 一つは「無音の楽団」が離散した。
 つまり仲間を集めなくてはならない。そのために、情報収集や盗賊技能に長けているレクィエと真っ先に再会できたのは幸運なことだ。
 そして二つ目はどうして能力値が下がったかということだ。
 カクヤの目に映る街並みは変わらずささやかで、空も圧迫すら感じられる濃い青が広がっているというのに、どこか違ってしまっているようだ。
 考えるカクヤはレクィエの下に置かれたコーヒーとメロンソーダで乾杯する。からん、と氷が溶けた音と連動するように、ふと思いついたようだ。
「レベルが下がっているのに意識があるということは、俺たちは死んで転生したとかじゃないな? なにか理由があって、過去に引き戻されたのか?」
 ここでレクィエがある情報を取りだした。これは大事な手がかりになる。
「ああ。死んではいない。だがここは過去でもないようだ」
「どうして過去じゃないとわかるんだよ」
「俺たちには未来の記憶がない。過去の記憶を失って、現在にいるんだ。わかるか? この意味が」
 カクヤの沈黙は考えていることによるようだ。あとは、他人から自分たちが死亡していないことを保証されて、安堵したのもあるだろう。
 だが、どうしてレクィエはカクヤの言うとおり、「怪我をしたわけでもないのに扱える技能は減少して能力値も下がっている。だが、カクヤたちは過去に戻ったわけではない」と保証できるのだろうか。
 レクィエはカクヤの知らない情報か手がかりを持っているのは確実だった。
「まあ、とりあえず我らが宿の『沈黙の楽器亭』に案内してくれ」
「飲み終わったらな」
 カクヤはメロンソーダのストローに口をつけて、炭酸の強さに咳き込みかけた。眺めているレクィエは面白いため笑った。

 喫茶店の二人分の代金をカクヤが支払い、二人は沈黙の楽器亭に戻っていった。
「俺はここに帰れなかった。だがカクヤとなら帰ることができた。これは一体どういうことだ?」
 古びた木造の宿を見上げたレクィエは誰にも聞こえないように小さな声で呟いた。
 これも謎の一つだろう。同時に情報だ。
 沈黙の楽器亭にはカクヤがいないと帰れない。
 そのカクヤが、宿帳を開いたと思うと声を上げた。
「どうした!」
 レクィエが慌てて宿の中に入る。
「喫茶店に入る前に見た無音の楽団の宿帳には、俺の名前しかなかった。だからいまレクィエを登録するためにこれを開いたんだが……!」
 一行しか埋まっていないはずの宿帳に記されている名前は二つある。
 最初は「カクヤ」で終わりは。
 「サレトナ」だ。
 顔を見合わせた。


4
―――――

 徐々に仲間が集まってきました!
 現在加入しているのは

1 カクヤ
2 レクィエ です。

これは本来の無音の楽団とは順番がすでに違っているのです!
次に見つかるのは誰か!

現在の「無音の楽団?」の図

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