「創作と新型コロナウイルス 2020」
Twitterで「創作TALK」さんというタグを見かけましたので、二千二十年の私、成瀬悠とサークル「不完全書庫」の創作活動を振り返ってみます。内容は創作活動に限らず、同人活動の流れも多分に含んでいます。
改めて今回はオプションテーマである「創作と新型コロナウイルス」に則りつつ、一創作者また一読者としての私見を書かせていただきます。
全ての文は個人の視点によるものだということをご了承ください。
【一月から三月 花が散る前触れ】
コロナウイルスの魔の手が忍びつつあった一月。個人的に印象深い出来事が二つありました。
一つは私の初めてのオリジナルファンタジー長編小説『花園の墓守 HP版』の初稿が完成しました。(Boothなどで頒布しております)
三年かけて、生まれて初めての長編が完成した瞬間はポメラを持ち上げて、加筆修正用の原稿を振り回しての大喜びでした! これでたかファレ(貴海×ファレンという自創作推しカップリング)に「原作があります!」と言える誇らしさに一杯でした。
そんな私は「どこで新刊にしようかなあ。印刷所さんも選ばないとなあ」とうきうきしていましたが、スマートフォンに届いた一通のメール。メールを読んだ私。
「コミケでたかファレ本の新刊出すなどやれるのは世界で私しかいない!」
いや自創作なので当たり前すぎることなのですが、あとここまで自分に酔いしれていたわけではありませんから。真面目なことも書きますからここで引かないでください。ただ、私の生きがいが世界で唯一のカップリング本を出すことなのも否定できません。セルフ二次創作楽しいですよ。でもたかファレも描いて(書いて)もらえましたら嬉しいです!
話がずれました。
「憧れのコミケに申し込みましょう! 今年は五月開催ですから体調も整えやすい!」
そしてオンラインで申し込みをし、入金まであと二日くらいだったので慌てて、まだお正月ムードの残る街を駆け抜けてコンビニエンスストアで入金しました。
この頃はまだ一月。
コロナウイルスも「封じ込め」でなんとかなるだろう。
そんな楽観的な予想がまだまだある雰囲気の頃でした。
二月は表紙と、たかファレのセルフ二次創作の原稿をしていました。
バレンタインデーネタをせこせこ書いていましたね。来年は通販対応になりました、とあるチョコレートの祭典に現地取材しに行きたかったなあと思いつつ。
そして、季節は春。三月。
『Fate/Heavens Feel』の公開が夏に延期になるなど、コロナウイルスは急速に二次元に対する暴力を拡大し始める頃でした。
様々なリアルイベントも開催が危ぶまれ、そこにはコミックマーケット98や文学フリマ、コミックシティなども含まれます。感染対策の注意喚起も増えてきました。
それでもまだ、日々の感染者がそこまで話題になることはなかったように覚えています。ですが、事態が加速し始めるのは春を迎えてからでした。
【四月から六月 緊急事態宣言、自粛。創作の花はどうなるか】
そして四月を迎えました。
とても陽気が素敵な日々が多かったのに、窓越しで眺める日ばかりなのが印象に残っています。仕事では在宅ワークが一気に増える最中でした。
無事にコミケの当選通知が届きました。
要項を眺めながらも嬉しさ三分の一、あとは複雑な心境で埋め尽くされていました。開催されたとしても参加は出来ないだろうという諦めが先に浮かぶのがとても哀しかったです。
本を作れたのに。
手に取ってもらえるかはわかりませんが、手に取ってもらえる機会そのものがなくなっていく。特別なイベントも潰れていき、日常も少しずつ変化を始めている。
ありきたりな文章ですが「当然来ると思っていた明日が来なくなる」ということを切に実感するとは、一月の段階ではまったく思っていませんでした。
四月の哀しみや複雑さは現実であって、ファンタジーではない。
なのに、いまの私にとって四月は現実ではない一ヶ月のように思い返してしまいます。
緊急事態宣言の発動も、四月でしたしね。
そして青葉が伸びる五月ですが、コミックマーケット98はやっぱりなくなりました。
応援の意味も込めて、申し込みの代金は寄付にしてカタログも買いました。
初めてのコミケのサークル参加のはずでした。
サークルカットがカタログに掲載されているのに、行けなかったのだなあという哀しみは、いまもじぐざぐな形で心に残っています。
ネタとしては美味しいと思ってしまう自分もいるのですけどね!
さて、また五月です。いまだイベント未参加の新刊、『花園の墓守 HP版』と『俺のハニーはスーパースウィート』という同人誌二冊を発行しました。
こちらで嬉しかったのは、Twitterで『たかファレスターターパック』(上記二冊をセットにした、たかファレについて知るパック)を発行しますとツイートしましたら、フォローさんが多数ご購入してくださったこと!
常日頃から「たかファレ」と私が言っていることから興味を持ってもらい、ご購入までしてもらえて、まさかの喜びになりました。
ご購入くださった皆様、応援してくださった皆様、心から感謝いたします。
暑くなりだした六月です。
この頃は、イラストをがんばり始めました。
『花園の墓守』の別ルート、『花園の墓守 完成版』をもっと綺麗な装丁で発行肢体、という願いからです。
この月だけで6枚くらい描いた気がしますね。
あと「カードワース」というパソコンゲームをプレイし直したのもこの頃だった気がします。いまレベル五になりました。
【七月から九月 夏の暑さとオンラインイベントの立ち上がり】
七月になりました。
実はこの月に私が誕生日を迎えておりまして、「たかファレください!」とツイートしていましたらたくさん素敵なイラストなどをいただきました! ありがとうございます!
この頃はオンラインイベント、というものがいろいろ始まった夏だったと記憶しています。エアブー、エアコミケ、そしてPictsquareさんがオンライン上で場所を用意してくださった、一次・二次、ジャンルを問わない様々なオンラインのオンリーイベント。
エアブーやエアコミケに関しては「不完全書庫」としてツイート発信などもしていましたが、正直まったく手に取ってもらっていません。
Pictsquareさんについては八月で主にお話します。
さて、七月の創作活動は在宅ワークの減少と、暑さにやられていろいろと大変でした。『花園の墓守 HP版』発行による燃え尽き症候群からか、小説も書けない。プロットが切れない。ううむ。苦しい月でした。
暑さの盛りの八月です。
この時期は私のタイムラインでもPictsquareさんによるオンラインイベントを主催する方などが結構見受けられました。コロナウイルスの拡大に背を押された形でしょうか。
私なりにオンラインイベントの良いところを考えましたら。
・交通費がかからない
主なイベントの開催場所は東京でも東京ビッグサイトや東京流通センター、あとは浅草などの細々とした会場。地方になりますとさらに限られます。
会場に行くだけでもまず大変です。けれどネット上にある会場ですと、通信を保てるようにしましたら、さくさく移動できるようです。交通費を抑えられるというのはさらに本を買えるということですね。
・物量的負担が少ない
コピー本を十冊程度でしたら鞄に入れて頒布できますが、今回二百三十六頁の本を出して思い知りました。手だけでは持って行けない。そしていまだ宅配業者さんへのお願いも緊張します。
ですが、オンラインイベントでしたら発送のコストだけで解決します。
・何かしらの事情によりイベントに参加が難しい方でもイベントの雰囲気を味わえる
これは「なるほど!」となりました。
同人イベントに参加したくとも、様々な事情で現地に参加できない理由があります。オンラインですと、インターネットに繋げられましたら参加できる。バリアフリー(ユニバーサルデザインとはちょっと違う気がしましてこの表現です)としてはすごくいいなと思いました。
・低コストで需要の少ないジャンルのイベントを気軽に起こせる
これは主に二次創作で便利だと思います。会場という箱の用意や様々な事務作業を簡略でき、知っている人が来られる。昔の個人で主催・協賛するオンリーイベントを思い出しました。
・活動可能時間と開催時間を合わせやすい
二つ上と少し重なりますが、リアルイベントは時間と日程が限られています。
オンラインイベントはオールタイムで開催できるのが良いところですね。あと参加や離脱も何度もできます。
と、ここまでお話しましたが。
私はメロンブックスさんへの委託を試すなどしていますが、頒布するということは道があっても難しいですね。やっぱり手に取ってもらえない 八月は頒布形態を模索する月でした。
宣伝や広報、時には人付きあいにも力を入れないと成り立たなくなっている同人文化はなかなか厳しいものです。
同時にここから「創作活動のあり方」についても考え始める時でもありましたね。全体としてではなく、私はどのように創作活動をするのが一番しっくりと楽しめるのかをまだ探しています。
今年の九月は暑かったのか涼しかったのか、なかなか思い出しづらいですね。
ここでは一旦、創作活動の私見についてではなく、私の創作活動とコロナウイルスについてお話させていただきます。ようやくオプションテーマにたどりつきました。
私の創作活動とコロナウイルスの関係。それは「どうなるかわからない」の一言に集約できます。
「わからない」と納得した理由。それは以前の本を出さない個人サイト(この記事を掲載している『不完全書庫』)だけの活動でしたら、そこまで気にしなかった「お金を出してまで読んでもらえるか」や「創作活動にお金を絡ませる」難しさを大きく実感したことが一つ。 新規の読者さんを獲得するのに広報や宣伝が大きく必要になっていることも一つ。
最後に作品に限らない自分の実力と努力の範囲の広大さ、最後には運が結局大きいのかしらなどと考えたためです。
創作活動は楽しいのです。ただ、創作活動後の「作品を届ける」が難しい。
あと九月は公募にこっそりとある作品を出しました。そちらも落選でした。
ですが、公募は楽しかったのでまたやりたいことです。
【十月から十二月 花はまた咲くから、種をまきたい】
十月もまだ私個人は創作活動の環境を模索するなか、社会ではコロナウイルスの影響も拡大の月でした。
リアルイベントは手厚い感染防止対策を求められつつ、再開され始めた頃だったと記憶しています。
まだまだ小説を書きたいのに書けない。苦しい。そういった月でした。
その代わりに、スマートフォンのアルバムを振り返りますとイラストをがんばっていました。四枚くらいカラーを仕上げていました。
ハロウィンは事前に書いていた小説も合わせて、たかファレ(貴海×ファレンという推しカプ以下略)のイラストも小説も更新できていました。
サイト『不完全書庫』が再稼動し始めたのもこの頃ですね。サイトの更新はどうしても時間とある程度の手間が必要になりますが、ホームとしてはとても安心する場所です。
時季遅れの紅葉が見上げられた十一月。コロナウイルスは拡大の一途を辿っていましたが、私の創作意欲は少しずつ復活してきました。
理由の一つはこの頃になって、ようやく私はあることに気付いたのです。遅い、ですが遅すぎなかった私が気付いたこととは。
創作活動=同人活動ではない。
ここまで同人活動の話がメインになっていたのはそういうわけです。
前述の気付きは私にとっては革命に等しい驚きでしたし、実際に活動を見直すのに大きな針になっています。六月以降のどうにもやりきれないのは、作品を作る楽しさと宣伝・広報をしないといけないという強迫観念が摩擦しあって、作る楽しさが潰れていたためです。
私にとって、創作活動は書きたいことと描きたいことを表すことです。
その表したものをどうやって届けるか、からが同人活動の領域になります。中身としては投稿サイトへの投稿や完成したデータの入稿などでしょうか。同人誌のデータ作成自体はまたがっている印象です。データだけ作るのも楽しいので。
この頃からはようやく以前のようにプロットを切ること、好きな小説を書く感覚を取り戻せました。
爽快でしたね!
作ることは楽しい。楽しいものを作って完成したその後は公表しなくても良い。好きな世界を好きなだけ作って、満足できたら完結していい。
ですが、他の人にも知ってもらいたい作品が出来ましたら同人活動の場に移って行動するのも一手なのだということが十一月の気付きでした。
厳しい寒さが取り囲む今年最後の月。十二月です。
新型コロナウイルスの脅威はまだ収束しません。私も必要以外の外出を控えていました。その代わりに年賀状を三回塗り直すなどしてデジタルの練習もしつつ、小説も長編のネタを埋めては咲かせているというのが現状です。
他には『Text-Revolutions EX2』(テキレボ・テキレボEX2が通称)という通販型同人誌即売会に参加しています。『花園の墓守 HP版』をはじめに五作品(年齢指定もありますのでご注意下さい)ほど用意しておりますのでよろしくお願いします。
再びイラストの話になりますが、描き納めから年賀状、寒中見舞いまで完成できたのは嬉しかったですし、安心できることでした。
小説は二千二十一年に沢山書きたいという夢を膨らましている最中です。キャラクターデザインなども進めているので、小説を書きたいのに絵を描くというのが謎な状況もたまに生まれますが、楽しいです!
【今年一年の総括】
一番は『花園の墓守 HP版』を出せたことです!
「滅びをどう受けとめるか」を物語の軸として、キャラクター「由為、衛、貴海、七日、きさら」の五人たちが何を大切にして生きるか。ファレンさんは彼らをどう見守るかを書けて、満足です。……満足ですのにまだまだ貴海さんとファレンさんのお話は書き足りないという思いが強いことには、自分の業の深さを上から覗いてしまいますね。
イラストはクリップスタジオさんを表紙に使えるようになれたのが成長したなあとしみじみしています。暑中見舞いや年賀状もデジタル塗りでお渡しできました。
同人誌も数えてみましたら三冊、書き下ろしで出していました。短編も四作ほど書いています。
見渡してみますと、いろいろ完成させられているともう少し自分を認められるようになりたいですね。
新型コロナウイルスで潰されたチャンスを、どこかで取り返せたらとも思ってしまいます。
【来年やりたいこと】
第一に同人誌として『花園の墓守 完全版』を出したいです! あと倒すのは表紙だけなのです……!
他には自己紹介用の短編集、ずっと構想をこねている短編集、たかファレブースター短編集の三つはがんばりたいところです。
次に長編のプロットを固めて、長い旅を書く準備を整えることも目標ですね。装備はしっかりして創作の荒野に向かえるように気をつけたいです。でないと遭難してしまいます。
イラストは「イラスト!」という雰囲気を描けるように細部にこだわりつつ、ノベルティを作成したいです。デザインセンスを磨ける年になりますように。
創作活動としては、あるツイートでも述べましたが。
「マイペースに楽しく、そして美しくロマンチックに」です。
今年一年を振り返ってモノを作るのはとても楽しかったのですが、それをどう手に取ってもらえるかという同人活動の面が強く出すぎて苦労しましたので。
まずは、楽しく。種をまいて、丁寧にお世話して、作品を収穫する喜びを噛みしめられる一年にしたいと思います。
新型コロナウイルスの災禍はまだ続きそうですので、ストレスとコストの少ない創作活動を考えることも、可能でしたらやりたいです。
【おわりに】
創作TALKさんの意図とはおそらく違う内容になってしまったことに、書き終えたいまは申し訳なさがあります。ですが、自分を振り返られるとても良い機会をいただきました。
特に「書こう」と思ったのは「創作と新型コロナウイルス」というテーマがあったためです。
個人的な記録も、無事に残せましたら後生の同人文化やコロナウイルス下での文化活動を調べる方にとっては重要な資料になると思います。「そんな方がいるのか?」「個人の感想は参考にされないのでは?」という方には、「意外といると思います」とお答えさせてください。今回は新型コロナウイルスという世界的衝撃を与えた天災も関わるため、その下で潰された同人活動がどうであったか、ということに興味を持つ方もきっといるはずです。
というよりも、同人活動の価値観や活動の変遷もまとめられて欲しいですし、正直、私が「やりたいなあ」と考えたことだからです。
一次二次問わず、創作活動について多くの記事や意見を述べることが可能になる、広い土壌が培われることを願います。
お読みしてくださった皆様に感謝のお言葉を。そして、来年も元気に楽しい日々をお送りできますようにお祈りさせていただきます。
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