うちよそ劇場 貴海さんとファレンさんとクリスティアさんとリアスさま

 志貴零さんのお子さん、クリスティアさんとリアスさんと、我が家の貴海さんとファレンさんが会ったときの話です。
 志貴さんありがとうございました!

 

 洒落た喫茶店のオープンテラスに、リアスとクリスティアがいた。
 先に気づいたファレンにコートの裾を引っ張られ、貴海はうなずく。できる限り気配を薄くして左隣の席に腰を下ろしかけたが。
 赤い瞳に一瞥されたので、やっぱり気づかれていたようだ。
 しばし黙ったまま、何も言わずに見合っていた四人だが、ファレンが先手を取る。 
「隣、いいか?」
「どうぞ」
 貴海たちにクリスティアに害を及ぼす悪意が無いことは理解しているのか、思っていたよりあっさりと了承される。ありがたいとファレンは奥に、貴海が手前に座った。同時にファレンは隣にいることになったクリスティアに笑いかける。貴海のあくどい、とは違う雪を溶かす日差しの笑顔だ。
 貴海はファレンの手元にココアを置きながらエスプレッソを口にした。苦みを味わいながら、もう一度手前の様子を眺める。
「……リアス様。ファレン、イケメンしてる……」
 クリスティアの発言にファレンは目をぱちくりさせていた。
「俺が」
「うん……」
「イケメンとな」
 今度はファレンが世界に認められたイケメンであるリアスの観察を始める。不躾にはならない視線を向け、頭の先から胸のあたりまでを三往復した。途中で背中を叩いて意識を戻させると、ファレンは腕を組む。
「イケメン……俺の周りにはいないから、新鮮な表現だ」
「貴海さんはどうなんだ」
「美少女。可憐」
 笑って言われるならばまだ救われた。貴海は後に由為に打ち明けるが、その場で「美少女」と貴海を評すファレンの顔は真剣そのものだった。嬉しい自分がいるのもなんだかな。
「まあ、この場で一番の美少女はと言われたら、クリスティアさんしかいないがな。リアスさんもイケメン一直線で、まさに美男美女! こちらも見ていて楽しいな」
 あまり噂などの類を気にしない貴海も、「笑守人学園にハイスペックな金髪のイケメンがいる」ということは耳にしていた。そうしていまになって正面から見る機会が生まれたが、確かに、二枚目や格好良いといった言葉もあてはまるが、端的に表すなら「イケメン」だ。
「……何か」
「「いえいえいえ」」
 思わず二人そろって手を横に振ってしまった。リアクションに困る行動されたというのにリアスはクールな表情を崩さない。目の前に置いてある四角いチョコレートに細い串を指して、クリスティアの口元まで運んでいく流れを当然かつ精密にやり遂げる。
 ぱくん。
 チョコレートが無事に口に含まれると、クリスティアの口から串が丁寧に抜けていく。
「リアス様……ありがと……。このなまちょこれーと、とろとろになって……おいしい」
「そうか。よかったな」
 天使の輪が見える青い髪を猫を懐柔する手つきで触れる。リアスの視線から指先にいたるまで、あらゆるところから、クリスティアを愛していることが伝わってきた。
 リアスの愛情は自分の両手という檻でクリスティアを保護している印象もあったが、檻を作るその手はいつだって優しさと心配で作られているのだろう。だから、クリスティアも受け入れている。
 貴海も先ほどファレンがハイテンションになった理由が、多少だが分かる気がした。そして、自分ももう少しくらい「イケメン」になれたら、と考えたが止める。向いていないので、無理はしないままファレンにもう少しだけ甘くなってみよう。
「そういえば、この生チョコレート。俺たちが来たときは店になかったな」
「まだ発売はしていない。今日はこれの試食をカリナのつてから頼まれたから来た」
 雑誌にも掲載されるほどの名店チョコレートカフェの新商品試食を頼まれる。なかなか世界が違うな、と考えているところで近寄ってくるよく似た容姿の男女がいた。
 レグナとカリナだ。
 お暇の頃合いだと、貴海とファレンは立ちあがる。空になったエスプレッソとココアのカップを手にしたときに声をかけられる。
「あら、貴海さんとファレンさん。こんにちは」
「こんにちは、カリナ。レグナ。相変わらず愛らしい二人だな」
「はは、ありがとう。ファレンさんも今日はいつもと少し違うね」
 レグナの返しにファレンは軽く笑い、言った。
「今日の俺はイケメンしてる、らしいからな!」
 それだけを言い残して、口を開く間がないままの貴海はファレンに手を引かれる。冬の空を見上げながら「今日は良い日だった」とさわやかに笑うファレンは。
 確かにイケメンだ。


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