『また逢う日まで』一年生六月編 感想

 『また逢う日まで』は志貴零さんのオリジナル作品です。
 イラスト、コミック、小説の三つの表現方法をそのとき、そのときの場面に合わせて構成されている少し変わった現代・学園ファンタジーになります。恋愛要素も入りますね。

 全体の作風は華やかかつ軽快。ユーモアに溢れています。
 ですが、光があれば影があるように、『また逢う日まで』も明るさの裏に厳しい物語が存在しています。

 主人公は四人いて、クリスティア、カリナ、リアス、レグナ。前半が少女で後半が少年です。
 この四人は最初の死で強い未練を抱いてしまい、新たな転生を拒みます。この世界での神にあたる存在は四人を天使として、ある条件を残しながら人生のやり直しを可能にしました。
 それから何度も繰り返し、いま書かれている作品で四人の主人公たちは最後の人生を歩んでいく。
 今回の感想は、四人が高校一年生の六月を過ごす話になります。

【全体】
 六月編は先輩である「紫電陽真」さんと「木乃武煉」さんの正式な登場と、体育祭がメインでしょう。
 現代ファンタジーだけあって、魔法も物理もキャラクターも個性豊かのオンパレード。
 序盤の演習という名前のバトルであった技名のセンスや詠唱などがきらびやかです。 
 体育祭にいたるまでのやりとりも、少しずつ関係が分かったり、深まっていくなどしていて心地よい雰囲気の中に少しの棘もあります。
 能力的に優れていて、先に何度も人生を経験してしまったクリスティアさんたち。わりとドライな面もあるのは、十八歳の壁を越えられない自分たちと、十代という花の時代を過ぎていき、年を重ねて老いていけることを疑わずにいられる人たちとの溝をうっすら感じているのかなと。いくら転生を重ねて知識や技術を蓄えても越えられない未練がある。

 そうして体育祭。
 百メートル捕縛走や騒動沈静マラソンなど、一風変わった種目が並びます。
 中でも、騒動沈静マラソンでのカリナさんの機転がどこまでもきいていく対応。
 ミッション遂行走でのクリスティアさんのリアスさんに対する一途すぎる告白。
 これらは何度も転生してきたからの強さと弱さが出ています。カリナさんはしたたかさを身につけて、クリスティアさんは長所である勇敢さを手放さずにいた。
 胸にきますね。

 そうして体育祭も無事に終わり、舞台は夏へ向かいます。

【推しキャラ】
 私の現時点での推しキャラクターは「レグナ=グレン」君です。
 メイン四人のあいだを器用に立ち回る繊細さと、徐々に見え始めた、目的のために手段は選ぶけれど結果は選ばせないようなギャップが好きです。
 おそらく、作中で一番悔しい思いをしているのが、過去編を含めてレグナ君ではないかと思っています。親友たちを最後まで結ばせることができなかった。妹(カリナちゃん)を助けられなかった。
 「みんなでいられる今が続くのならずっと立ち止まったままでもいい」といった考えは、避けられない運命を前にして揺らぐのか、抱き続けられるのか。

【ハイライト】
『手抜かないでねとは言ったけどここまで本気でいいとも言ってない』

 体育祭の最後の競技で、最強性能を持つリアスさんにどのように対抗するかをクラスメイトたちと話し合うレグナ君のシーン。 
 この話は、いままで四人のシェルターの中にいたのが少しずつ崩れ始めていくようで、好きなのです。

【おわりに】
 思った以上にレグナ君推しの内容になりました。実際に推しですが。
 私は、この作品で何度もやり直すくらいに別れたくないクリスティア、リアス、レグナ、カリナの四人の強固だったシェルターがどのように崩れていくかを悪趣味ではなく見たいのです。
 すごく強くて、達観していて、それでも枷や条件に縛られている。羽を与えられたからこそ飛べなくなってしまった天使たち。
 読み重ねていくたびに、愛おしくなります。
 同時に、『また逢う日まで』は自由と平等が決まりとして強調されている作品ですが、それはいまだ、偏見や差別などが溢れている世界があるから生まれた舞台なのか。考えてしまいます。

 五月編までは主に四人で動いていた物語が、徐々に友人や先輩など関わりが広がっていくことが本当に嬉しい。
 これからも応援しています。

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